日本が殺人を犯して逃げたって?
原則として時事ネタはあつかわないつもりですし,あげあしとりしようとおもってこのブログをはじめたのではありませんが,これはあまりにもひどいとおもったのでとりあげます。
うえの記事は読売ONLINEですが,おなじような記事はほかにもいくつもありました。
Trumpさんのことばづかいがわるいのはいまにはじまったことではないですが,かれはほんとうに「日本とかは殺人を犯しておきながら許されている」なんていったんでしょうか?
問題の発言はこれです
The United States loses “vast amounts of money with China and Japan and South Korea and so many other countries ... It’s a little tough for them because they’ve gotten away with murder for 25 years. But we’re going to be changing policy,” he said.
:U.S. to push for 'reciprocal tax' on trade partners: Trump
get away with murder
これは慣用句的メタファーです。しかもかなり有名な。高校生用の英和辞典にもかならずのっています。
たしかにちょっとぶっそうにきこえます。直訳すれば「殺人をしてにげる」ですが,意味は:
do whatever you want without being stopped or punished (OALD)
「すきかってなことをしてとがめをうけない」
読売「トランプ氏は不公平な貿易により、米国の製造業が衰退し、雇用が失われる一方、相手国は不当に利益を得ているというのが持論で、その被害の大きさを「殺人」という極端な言葉に込めたとみられる。」
いやそうじゃないでしょ。「murderという極端なことば」って,それ単に慣用句の一部ですから。
比喩的な表現をこんな直訳されたらTrumpさんもたまったもんじゃないですね。
それにしても,アメリカの大統領の発言という,とりあつかいに細心の注意を要するはずの情報について,こんな記事がチェックもされずにあっちこっちで配信されてしまうんですね,このくにのメディアって。
ちょっとまえにもこんなのがありました。
I mean, who's our chief negotiator with Japan? Caroline Kennedy. She was shocked that she got the job. She said, I can't believe they made me the ambassador to Japan.
"And she's dealing with a killer named Abe (Japan's prime minister), who really has done a great job, by the way, devaluing the hell out of the yen, out their currency.
日本のテレビはこれを「トランプが安倍首相を殺人者とよんだ」と報道したようですが,
すぐあとでwho really has done a great job,
ってほめているんですからそんなわけないやろ。
killerってほめことばですよ。She's a killer.っていったら普通はShe's very attractive.という意味でしょう。
ゲーム「スペースインベーダー」もむかし「キラーソフト」っていわれました。
「キラーアプリ」っていうのもごぞんじですね。
あと,椎名林檎の「キラーチューン」知ってたら誤訳しなかったかもね。
以上,きょうの脱力レポートでした。