京大入試カンニング事件 再検証

京大入試カンニング事件 再検証

 

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ことしも入試の季節がやってきました。

 

2011年の京大入試で携帯電話をつかったカンニング(未遂)事件があったのをおぼえていますか。

 

ある受験生が京大の英作文の問題を携帯でYahoo知恵袋にupし,それに善意の第3者が答をつけたというものでした。(くわしくはWikipediaでどうぞ)

大学入試問題ネット投稿事件 - Wikipedia

 

これがその問題と知恵袋に書かれた答です。

(1) 「楽しいはずの海外旅行にもトラブルはつきものだ。

Problems should be fun to travel abroad is inseparable.

 

(2) たとえば、 悪天候や自然災害によって飛行機が欠航し、海外での滞在を延ばさなければならないことはさほど珍しいことではない。

For example, a canceled flight, weather and natural disasters that have extended stay abroad is not so uncommon.

 

(3) いかなる場合でも重要なのは、冷静に状況を判断し、当該地域についての知識や情報、さらに外国語運用能力を駆使しながら、目の前の問題を解決しようとする態度である。」

In any case important to calm the situation, knowledge and information about the area, while making full use of foreign language proficiency in addition, is the attitude of trying to solve the problem before him.

 

このやりとりは2016年現在もこのサイトにのこっています。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1256314487

 

ぼくはこれを見て,「カンニングとはけしからん」とか思うよりもこの答自体にすごく興味をひかれました。

だってたとえば第1文を見てください。"Problems should be fun to travel abroad"って一見"This book is fun to read."「この本を読むのは楽しい」みたいな「tough構文」に見えます。

easyとかならともかく,funという名詞でtough構文を作れるのは(日本では)かなり英語を知っている人だと思います(nativeなら5才の子どもでも知っているでしょうが)。

でも意味はどうでしょう? tough 構文はふつうつぎのように書きかえができます(それぞれつかうべき文脈はちがいますが,論理的意味はおなじです)。

 

This book is fun to read.

⇒It is fun to read this book.

 

おなじように第1文を書きかえると:

 

"Problems should be fun to travel abroad"

⇒It should be fun to travel problems abroad.

 

まあ travel にもいちおう他動詞がありますからかたちのうえではこうなります。

 

でも意味をなしません!「海外で問題を旅するのはたのしいはずだ」って,なんじゃそりゃ。

 

さらにつづきを見ると:

 

Problems should be fun to travel abroad is inseparable.

 

abroadでいちおうおわっているはずの文にいきなり動詞 isがつづいてます。

独立した文を is の主語にすることはできません(あたまに接続詞 that をつけて名詞節にすればまあ可能ですが,すごい文語体)。

 

つまり,まったく英語の文の構造がなりたっていないのです

 

第2文以下もめまいがしそうなくらいでたらめな単語の羅列です。

はい,0点です。

 

この答,よほど英語がにがてな人がむりしてつくったのでしょうか?

 

いいえ。

 

もしそうならinseparableとかproficiencyなんていう高級な単語をまったくつづりのまちがいもなく書けるはずがありません。

それに,知恵袋に記録された書きこみ時刻を見てください。

 

入試問題は9時37分43秒に書きこまれています。

答が書かれたのは9時43分27秒

 

問題が書きこまれた瞬間に作業をはじめたとしても6分かかってません。

 

こんな不思議な英語をこんな短時間でつくれるやつといえば?

 

そう,翻訳ソフトにきまっていますね。

 

この答を見て5秒くらいでこう思ったぼくは「ではどの翻訳サイトをつかったのか」をつきとめたくなってすぐパソコンにむかいました。

 

その結果は当時ぼくが書いた書きこみでごらんください。

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というわけで日本初?の大学入試サイバーカンニング(正しくはcyber cheatingですね)はさんたんたる失敗におわりました。

 

 ここまでは思い出話でした。

 

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15.8% of teens have admitted to cheating on a test by looking up answers on their phone.

 15.8%が携帯でテスト中に答を検索したことがあるそうです。これはアメリカのデータかな?

 

 

きょう,ふとこの事件のことを思い出し,「あれからもう5年たつからコンピュータ翻訳もかなり進歩しただろうな」と思ったので,たしかめてみることにしました。

 

まずあれからますます巨大化したGoogleに期待してみよう。人工知能で車の自動運転まで実現させたんだから。

 

google 翻訳

(1) 楽しいはずの海外旅行にもトラブルはつきものだ。

⇒Also trouble's inherent in overseas travel of fun should.

 

 (2) たとえば、 悪天候や自然災害によって飛行機が欠航し、海外での滞在を延ばさなければならないことはさほど珍しいことではない。

 For example, an airplane is canceled by bad weather and natural disasters, not so much rare thing that you must extend your stay abroad.

 

(3)いかなる場合でも重要なのは、冷静に状況を判断し、当該地域についての知識や情報、さらに外国語運用能力を駆使しながら、目の前の問題を解決しようとする態度である。

In any case, even important, calmly and to determine the circumstances, knowledge and information about the region, further, while making full use of foreign language proficiency, it is attitude to try to resolve the eyes of the previous problem.

 

アカンわ・・・ 残念ながらまた0点です。

 

(1)「~につきもの」をinherent inとしているのはかっこいいけど(→システム英単語でdangers inherent in the sport「そのスポーツに元から伴う危険」をおぼえている人いるでしょ?p.269ね ),なんですかこの文末にくっついているshouldは? 5年前よりむしろひどいかも。

(2) disastersまではいちおう英語になっています。そのあとが不可解。

(3) むかしのとあまりかわりばえしない。

 

 

つぎは

★エキサイト翻訳

(1) 楽しいはずの海外旅行にもトラブルはつきものだ。

Trouble is also a devil in the overseas travel which should be fun.

 

(2)たとえば、 悪天候や自然災害によって飛行機が欠航し、海外での滞在を延ばさなければならないことはさほど珍しいことではない。

For example an airplane neither flies nor is that it's little rare to have to extend the stay at foreign countries by bad weather and a natural disaster.

 

(3)いかなる場合でも重要なのは、冷静に状況を判断し、当該地域についての知識や情報、さらに外国語運用能力を駆使しながら、目の前の問題を解決しようとする態度である。

It's the attitude which tries to settle an immediate problem that it's important in every kind of case while judging the situation and using knowledge and information and also foreign language operational capability about an area concerned calmly.

 

 

 (1)Trouble is a devil !!なにそれ?? ひょっとして「憑き物」→「悪魔」って解釈した?それともdevilを「こまった問題」の意味でつかっているの? 文構造はいちおう成立しています。

(2)は意味不明。 (3)でめだつのは「問題を解決しようとする態度」をthe attitude which tries to settle an immediate problemとしていること。これだとattitudeそのものが問題解決をはかるみたいです。こういう答は受験生もよく書きます。

 

たとえば「英語を話す国」を a country which speaks Englishとかa country speaking Englishみたいにしてしまう子が多いのです。

 

これは日本語の欠陥?のひとつ,「連体修飾節(英語でいう関係節)とそれがかかる名詞との関係がゆるゆるででたらめ」ということが原因でしょう。

かってに主語や目的語を省略してしまい,文構造(文型)についての情報が欠けている日本語を,英語みたいに関係節がそのもととなる文の文構造をほぼ完全に保持する言語に機械的に訳すのは,いくら頭のいい技術者ががんばっても原理的にむりなので,翻訳ソフトをけなすのはかわいそうです。

 

Weblio翻訳   

ここは英語が出てくるまでちょっと処理に時間がかかります。よく考えているということかな?

 

(1) 楽しいはずの海外旅行にもトラブルはつきものだ。

The overseas travel that should be fun always comes together with the trouble.

 

(2) たとえば、 悪天候や自然災害によって飛行機が欠航し、海外での滞在を延ばさなければならないことはさほど珍しいことではない。

 For example, an airplane is canceled by bad weather and natural disaster, and it is not very a rare thing to have to postpone the stay in foreign countries.

 

(3)いかなる場合でも重要なのは、冷静に状況を判断し、当該地域についての知識や情報、さらに外国語運用能力を駆使しながら、目の前の問題を解決しようとする態度である。

Important one judges the situation calmly, and knowledge and the information about the area concerned are the manners that are going to solve a problem at hand more under any circumstance while making full use of ability for foreign language use.

 

(1) おお,時間をかけているだけあって,これはけっこうちゃんとした英語の構造になっているじゃありませんか!

「つきもの」をcome together withとしています。「~にともなう」という意味はたしかにありますね。troubleにいきなりtheは変ですが。

 

(2) これも文構造に破綻はありません。こまかいつっこみどころはあるけど。 it is not very a rare thingはだめですね。 it is not  a very rare thingですね。

 

(3) これはだめですね。the manners that are going to solve a problemのところでエキサイト翻訳とおなじたぐいのまちがいをおかしています。これでは態度自体が問題を解こうとしているみたいです。

 

翻訳サイトをけなすだけでは卑怯なので,いちおうきょうぼくが書いたのをあげておきます。できるだけ受験生にも書けそうな表現をつかいました。native consultantには見せていませんので,ミスがあるかもしれませんが。サンディさんのhubbyさんに見ていただいたので(↓コメント欄参照)英語そのものはほぼこれで問題ないでしょう。

 

Traveling abroad should be fun, but you should always expect some problems. 

 

For example, it is not unusual to have to stay abroad longer than you planned because your flight is cancelled due to bad weather or a natural disaster. 

 

In any case, it is important to calmly judge the situation and try to solve the problem you are facing by using your language skills and the information you have about the area you are in.

 

「態度」は情報的にあまり価値がないとみて切りました。また「知識や情報」というのはやや冗長と感じたのでより包括的な「情報」だけにしました。knowledgeとinformationの意味がちがうのはわかっていますが。

 

最後の「情報」と「運用能力」は語句が長いほうをあとにおきたかったので順序をいれかえました。

受験生はこういうアレンジをするのはためらうとおもいますが,英語としてより自然にしたかったので。

 

いかがでしょうか?おかしいところがあったらつっこみをおねがいします。

 

 

 

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   ことしこそ,あたらしい一歩をふみだしたいと思います。  CYA  !